DENIME 66タイプ:林芳亨が手がけた Levi's 501 1966 model 復刻の系譜
日本のヴィンテージデニムリプロダクション黎明期を支えたDENIME 66タイプ。Levi's 501 1966 model の特徴と、その復刻に込められた歴史とディテールを深掘りします。
by editorial
DENIME 66タイプ:Levi’s 501 1966 Model 復刻の系譜
はじめに
デニムという素材は、単なる衣服を超え、時代背景や文化を映し出す鏡として、多くの人々を支持され続けています。その中でも、特定の年代のジーンズを忠実に再現しようとするレプリカジーンズは、オリジナルへの敬意と、失われゆくディテールへの探求心から生まれました。本稿で取り上げる DENIME の「66タイプ」は、そのようなレプリカジーンズの世界において、Levi’s 501 の1966年モデル(以下、‘66 model)を意識して作られた、ブランド初期の代表的なモデルです。その誕生は、日本のジーンズ復刻の歴史における重要な一節であり、創業者の林芳亨氏の情熱と、当時のデニム市場の動向が色濃く反映されています。
歴史的背景 — 誕生年・ブランドの文脈
DENIME は、1988年に林芳亨(Yoshifumi Hayashi)氏によって設立されたブランドです。林氏は、オレンジカウンティ、そしてオリゾンティ(Orizzonti)での経験を経て、自身のブランドである DENIME を立ち上げました。オリゾンティは、イタリア語で「地平線」を意味し、1980年代後半から90年代にかけて、日本のヴィンテージレプリカジーンズ黎明期の第二波を担った主要ブランドの一つでした。Studio D’Artisan が1979年に創業して以降、DENIME は1988年の設立であり、当時の「大阪五人衆」と呼ばれるレプリカブランド群の中でも、比較的初期に位置づけられます。
この時代、オリジナルヴィンテージジーンズは年々高騰し、入手困難になっていました。そのような状況下で、オリジナルが持つ独特の風合いやディテールを忠実に再現しようとするレプリカジーンズへの需要が高まりました。DENIME の「66タイプ」は、まさにそのような市場のニーズに応える形で誕生し、Levi’s 501 の歴史的転換点とも言える ‘66 model をターゲットとした復刻版でした。
構造の詳細 — セルヴィッジ・ハードウェア・ステッチ・シルエット
DENIME の「66タイプ」は、オリジナルである Levi’s 501 ‘66 model の特徴を、当時の日本の生産技術で再現することを目指しました。
- 生地: 右綾(Right-Hand Twill, RHT)のセルビッジデニムが採用されています。当時の Levi’s ‘66 model の生地は、Cone Mills White Oak 製のものなどが見られ、およそ13oz前後で語られることが多いです。DENIME の66タイプでは、オリジナルに近い数値を志向し、経糸(タテイト)には意図的にムラ糸を使用することで、独特の風合いと、穿き込むほどに現れる深みのある色落ちを目指したとされています。この「ムラ糸」の使用は、当時の紡績精度に起因する糸ムラと、レプリカブランド側の意図的な仕様との概念的な区別が重要です。
- 染色: 伝統的なロープ染色によるインディゴ染めが施されています。これにより、タテ落ち、ヒゲ、ハチノスといった、ジーンズを穿き込むことで現れる経年変化(エイジング)が、より顕著に、そして美しく現れるように工夫されています。
- ハードウェア:
- ボタン: オリジナル刻印入りのボタンが使用されています。
- リベット: Levi’s 501 ‘66 model では銅メッキ鋼(copper-plated steel)のリベットが採用されていましたが、DENIME の66タイプにおいても、それに近い素材が使用されていたと推測されます。
- パッチ: ‘66 model の最大の特徴の一つは、それまでのレザーパッチから Jacron(ジャクロン)と呼ばれる紙素材のバックパッチ(ウエストパッチ)への移行でした。DENIME の66タイプも、この時代背景を反映し、紙パッチ(Jacron 系) を採用しています。初期 DENIME のパッチ素材については、当時の資料やコレクター間の情報交換により、細かな仕様が確認されることがあります。
- ステッチ:
- バータック(X-tack): 1966年頃から Levi’s 501 で採用され始めたバータック(X-tack)による補強が、バックポケットや股部分などに施されています。これは、隠しリベットが廃止された後の耐久性を高めるための重要なディテールです。
- アーキュエイトステッチ: バックポケットに施される特徴的なアーキュエイトステッチも、オリジナルのデザインを踏襲しています。
- 裾上げ: 裾上げは、ヴィンテージジーンズの定番であるチェーンステッチで行われています。
- レッドタブ: ‘66 model は、1971年まで採用されていた Big E のレッドタブを備えています。DENIME の66タイプも、この「Big E」タブを忠実に再現しています。
- シルエット: オリジナル ‘66 model の特徴である、やや細身でテーパードのかかったストレートシルエットを再現しています。これは、それ以前のモデルと比較して、より現代的な着用感に近づいたシルエットと言えます。
真贋・年代の見分け方(ビンテージ vs レプリカ)
DENIME の66タイプは、あくまで Levi’s 501 の ‘66 model を「復刻」したレプリカジーンズです。そのため、オリジナルのビンテージ ‘66 model と DENIME の66タイプを比較する際には、いくつかのポイントがあります。
- ブランドタグ: 最も明白な違いは、ブランドロゴです。オリジナルは Levi’s のブランドロゴが入ったパッチとタブですが、DENIME は独自のブランドロゴやモデル名が入ったパッチ、タブが使用されています。
- 製造国: オリジナルの Levi’s ‘66 model はアメリカ製ですが、DENIME の66タイプは日本で製造されています。
- 細部のディテール: レプリカブランドは、オリジナルを再現しようと努めますが、生地の素材、染色の深み、ハードウェアの質感、ステッチの糸調子など、微細な部分で違いが見られることがあります。例えば、DENIME の66タイプで意図的に使用されたムラ糸の表情や、経年変化の質感が、オリジナルのそれとは異なる場合があります。
- 経年変化の度合い: DENIME の66タイプも年月を経てエイジングが進みますが、オリジナルのビンテージジーンズが長年の着用と洗いを経てきた風合いとは、当然ながら異なります。
- シリアルナンバーやロット: DENIME の初期ロットの66タイプには、製造年やロットを示す情報が記載されている場合があります。これらを比較することで、年代を特定する手がかりとなります。
オリジナル ‘66 model の特徴としては、隠しリベットの廃止(1966年〜)、Jacron 紙パッチ(1955年〜)、Big E Red Tab(1936-1971)、そして 右綾(RHT)セルビッジデニム が挙げられます。DENIME の66タイプは、これらのディテールを再現しており、その忠実さが評価されています。
著名人・文化的な登場シーン
DENIME の66タイプは、特に1990年代のアメカジブームにおいて、多くのファッション雑誌で取り上げられました。Boon、Lightning、Free & Easy といった当時の代表的なファッション誌では、DENIME の66タイプをはじめとするレプリカジーンズが頻繁に紹介され、多くの若者のデニムへの関心を高めました。これらの雑誌は、ジーンズの歴史や、「raw denim(生デニム)」の魅力、そして経年変化の楽しみ方を読者に伝え、DENIME のようなブランドが支持される土壌を築きました。
著名人がDENIME の66タイプを着用していたという具体的な逸話は、資料からは明確には確認できませんが、当時のアメカジスタイルを愛好する多くの人々にとって、DENIME は憧れのブランドの一つであり、その66タイプは「Levi’s 501 ‘66 model」という伝説的なジーンズに触れるための、手軽で本格的な選択肢でした。
現在の入手先(ビンテージ市場・レプリカブランド)
DENIME の66タイプは、ブランド設立初期のモデルであり、現在では新品での入手は極めて困難です。しかし、その人気と希少性から、以下のルートで入手を試みることができます。
- ビンテージ市場:
- オークションサイト: Yahoo!オークション、eBay などのオンラインオークションサイトでは、出品されることがあります。状態やサイズ、モデル(初期ロットか、後期の仕様変更モデルかなど)によって価格は大きく変動します。
- 古着店・セレクトショップ: ヴィンテージウェアを扱う専門店や、一部のセレクトショップでは、中古品として取り扱われている可能性があります。
- レプリカブランド:
- DENIME ブランド自体は、現在も活動を続けており、後年、当時のモデルを再復刻する形で「66タイプ」をリリースしている場合があります。ただし、初期のモデルとは仕様や素材が異なる可能性もありますので、購入時には詳細な仕様を確認することが重要です。
- Levi’s ブランド自体も、‘66 model の復刻版を不定期にリリースすることがあります。
オリジナルの Levi’s 501 ‘66 model は、さらに希少性が高く、状態の良いものは高額で取引されています。DENIME の66タイプは、そのようなビンテージデニムの世界に足を踏み入れるための、歴史的価値とファッション性を兼ね備えたアイテムと言えるでしょう。
まとめ
DENIME の66タイプは、単なるジーンズの復刻モデルに留まらず、日本のヴィンテージデニムリプロダクションの歴史における重要な一歩を示しています。創業者の林芳亨氏が、Levi’s 501 の’66 model という、ジーンズの歴史において特筆すべきモデルを、当時の技術と情熱をもって再現しようとした努力の結晶です。セルビッジデニム、Big E レッドタブ、紙パッチ、バータックといったディテールへのこだわりは、オリジナルへの深い敬意の表れであり、当時のデニムファンの心を掴みました。
現在、DENIME の66タイプは、ビンテージ市場でその価値が再認識されており、当時のアメカジ文化を象徴するアイテムの一つとして、多くのデニム愛好家に探し求められています。この一本は、過去のスタイルを現代に繋ぎ、デニムの奥深い世界への扉を開いてくれる存在と言えるでしょう。
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