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FULL COUNT 1101:辻田幹晴がEVIS独立後に立ち上げた創業期定番モデル(1993)

デニムブランドFULL COUNTの創業期を飾る定番モデル、1101。EVIS独立後、辻田幹晴氏が1993年にリリースしたこのモデルの歴史、スペック、そして文化的重要性について深掘りします。

FULL COUNT 1101 ジーンズ デニム ヴィンテージ レプリカ

by editorial

セルビッジの端のステッチのクローズアップ
Photo by CHUTTERSNAP on Unsplash

FULL COUNT 1101:辻田幹晴がEVIS独立後に立ち上げた創業期定番モデル(1993)

1. はじめに — このアイテムが文化的に重要な理由

デニムの世界には、時代を超えて語り継がれるべき名作が存在します。FULL COUNT(フルカウント)の「1101」は、まさにそのような一本と言えるでしょう。1993年、数々の伝説的なジーンズブランドを生み出した「大阪五人衆」の一角である辻田幹晴氏が、EVIS(後のEVISU)から独立し、自らのブランド「FULL COUNT」を立ち上げて最初にリリースしたのが、この1101なのです。それは単なるジーンズという衣服を超え、日本のレプリカデニムの黎明期における重要なマイルストーンであり、ブランドの哲学を色濃く反映した「創業期定番モデル」として、今なお多くのデニム愛好家から支持されています。本稿では、この1101が持つ歴史的背景、ディテール、そして文化的な意義を、デニムの歴史家として、そして熟練したコンテンツライターとして、深く掘り下げていきます。

2. 歴史的背景 — 誕生年・ブランドの文脈

FULL COUNT 1101の誕生は、日本のジーンズシーンが大きな転換期を迎えていた時代に遡ります。

  • 1991年: 辻田幹晴氏、山根英彦氏(後のEVISU創業者)、そして塩谷兄弟(後のWAREHOUSE & Co.創業者)の4名が、大阪で「EVIS jeans」を立ち上げます。これは、アメリカのヴィンテージジーンズを忠実に再現しようとする「レプリカ系ジーンズ」ムーブメントの草創期を象徴する出来事でした。
  • 1992年末: ブランド内での哲学や方向性の違いから、辻田氏は単独で独立。この時点でFULL COUNTとしてのジーンズ製造を開始しますが、当初はアメリカ綿を中心とした素材を使用していました。
  • 1993年: 法人としての「FULL COUNT」が正式に設立され、ブランドの記念すべき初代モデルであるLot 1101がリリースされました。これが、FULL COUNTの歴史の幕開けとなる一本です。
  • 1994年: 辻田氏が、後にFULL COUNTの素材戦略の根幹となる「ジンバブエコットン」と出会います。この出会いが、ブランドの生地開発における大きな転換点となります。
  • 1995年: Lot 1108がリリースされます。これはLevi’s 1947 501のフィットをベースにしたスリムストレートモデルであり、ジンバブエコットンの特性を活かした生地が特徴です。

このように、1101はFULL COUNTというブランドが産声を上げた、まさにその瞬間に生まれたモデルであり、ブランドのアイデンティティを形作る上で極めて重要な位置を占めています。

3. 構造の詳細 — セルヴィッジ・ハードウェア・ステッチ・シルエット

FULL COUNT 1101が創業期定番モデルとして、その後のブランドの基盤を築く上で重要視されたディテールを見ていきましょう。

  • 生地 (Selvedge Denim): 創業期の1101は、アメリカ綿をベースとした生地が使用されていたとされています。ジンバブエコットンの採用は1994年以降であり、1101の創業期スペックとしては、アメリカ綿による独特の風合いが特徴であったと考えられます。オンス数、番手、打ち込み密度といった具体的な生地スペックについては、一次資料での詳細な確認が待たれますが、当時のレプリカジーンズとしては、ヴィンテージの風合いを再現しつつ、現代的な穿きやすさも考慮された設計思想が伺えます。
  • ハードウェア: リベットには銅メッキ系の素材が採用されており、ヴィンテージジーンズのディテールを踏襲しています。ボタンフライは5ボタンフライがFULL COUNT系統の特徴として挙げられ、これも1101に採用されていたと考えられます。隠しリベットの有無など、細部の仕様については、当時のロットや年式によって若干の差異が見られる可能性があり、コレクターにとっては重要な識別ポイントとなります。
  • ステッチ: バックポケットには、Levi’sの「アーキュエイト」ステッチとは異なる、FULL COUNT独自のステッチワークが施されています。これはブランドのアイデンティティを示す重要な要素であり、当時の職人たちの手仕事による温かみが感じられる部分です。
  • シルエット: 1101は、創業期における定番ストレートシルエットとして位置づけられています。Levi’s 501XXの黄金期(1940年代〜1950年代)を参照したフィット感は、ヴィンテージジーンズの普遍的な魅力を持ちながらも、現代のファッションスタイルにも馴染むように調整されていると考えられます。後続モデルである1108がLevi’s 1947 501フィットをベースにしたスリムストレートであることからも、1101はよりクラシックなストレートラインを基本としていたことが伺えます。

4. 真贋・年代の見分け方(ビンテージ vs レプリカ)

ヴィンテージ市場におけるFULL COUNT 1101の初期モデルは、その希少性からコレクターズアイテムとなっています。真贋や年代を見分けるためには、いくつかのポイントに注目する必要があります。

  • パッチ: 初期モデルでは、素材やデザインに変化が見られます。現行の1108モデルではゴートスキンレザーパッチが採用されていますが、創業期の1101ではどのような素材が使用されていたか、一次資料での確認が重要です。Levi’sのパッチがレザーからジャクロン紙へと変化した年代(1950年代半ば頃)との比較も参考になります。
  • セルヴィッジ (Selvedge): セルヴィッジの織り幅や色味、そして赤耳(Red Tab)の仕様なども、年代を特定する手がかりとなり得ます。FULL COUNTのタブは、Levi’sの「Big E」タブ(1936年〜1971年)とは異なる独自のものです。
  • ハードウェア: ボタンやリベットの刻印、素材、メッキの状態などを詳細に観察することで、製造時期の推定が可能になります。
  • ステッチ: バックポケットのステッチデザインや糸の太さ、色なども、ロットや年代によって微妙な変化が見られることがあります。
  • 生地の経年変化: ヴィンテージの1101は、着用と洗濯を繰り返すことで独特の色落ちやアタリが生じています。この経年変化のパターンや深さは、その個体がどれくらいの期間、どのように穿かれてきたかを示唆します。

レプリカブランドとして、FULL COUNTは創業以来、ヴィンテージジーンズへの敬意を払いながらも、現代的な解釈を加えた製品を生み出してきました。したがって、「レプリカ」という言葉は、単なる模倣ではなく、ヴィンテージの魅力を現代に蘇らせるというポジティブな意味合いで捉えるべきでしょう。

1990年代のデニムカルチャーストリートスタイル
Photo by Chi Lok TSANG on Unsplash

5. 著名人・文化的な登場シーン

FULL COUNT 1101が、特定の著名人によって頻繁に着用され、メディアに登場したという記録は、現時点では確認されていません。しかし、その文化的な登場シーンは、むしろ日本のデニムシーン全体の文脈の中で語られます。

FULL COUNTは「大阪五人衆」と呼ばれる、日本が世界に誇るデニムブランド群の一員です。Studio D’Artisan(1979年)、DENIME(1988年)、EVISU(1991年)、FULL COUNT(1993年)、WAREHOUSE(1995年)という年表上に、FULL COUNTは中堅に位置します。これらのブランドは、それぞれが異なる哲学を持ちながらも、ヴィンテージデニムへの深い愛情と、それを現代に再現しようとする情熱を共有していました。

1101は、まさにこの流れの中で、ブランドの「顔」として誕生しました。その存在は、単に一つのジーンズモデルというだけでなく、FULL COUNTというブランドが、日本におけるレプリカデニムの発展にどのように貢献してきたかを示す証でもあります。多くのデニム愛好家や、ファッション業界関係者にとって、FULL COUNTは「肌触りの良さ」や「ジンバブエコットン」といったキーワードと共に語られるブランドであり、1101はその礎を築いたモデルと言えます。

6. 現在の入手先(ビンテージ市場・レプリカブランド)

FULL COUNT 1101の初期モデル、特にデッドストックや良好なコンディションのヴィンテージ個体は、現在では希少価値が高く、入手は容易ではありません。

  • ビンテージ市場: 主に、国内外のセレクトショップ、古着屋、オンラインオークションサイトなどで探すことになります。一点物となるため、サイズや状態、価格は個体ごとに大きく異なります。状態の良いものは、コレクターの間で高値で取引されることもあります。
  • レプリカブランド: FULL COUNTは現在もブランドとして存続しており、定番モデルとして1101(またはそれに類するモデル)を製造・販売しています。新品の1101は、ブランドの公式オンラインストアや、全国の正規取扱店で購入することが可能です。創業当時のディテールを再現しつつも、現代の技術と素材でアップデートされた、穿きやすく、そして長く愛用できる一本となっています。

7. まとめ

FULL COUNT 1101は、1993年、辻田幹晴氏がEVISから独立し、FULL COUNTを立ち上げた際にリリースされた、ブランドの創業期を象徴する定番モデルです。それは、日本のレプリカデニム黎明期において、ブランドのアイデンティティを確立し、その後の発展の礎を築いた重要な一歩でした。

アメリカ綿をベースとした生地(創業時)、ヴィンテージを踏襲したハードウェアやステッチ、そして普遍的なストレートシルエットは、当時のデニム愛好家たちに、ブランドの哲学とものづくりへの真摯な姿勢を伝えました。後にジンバブエコットンを採用し、よりしなやかな穿き心地を追求していくFULL COUNTのDNAは、この1101に既に息づいていたと言えるでしょう。

ビンテージ市場では希少な存在となりつつある初期の1101。しかし、新品として手に入れられる現行モデルにも、創業当時の精神は確かに受け継がれています。FULL COUNT 1101は、単なる一本のジーンズではなく、日本のデニム史における重要な証であり、時代を超えて愛されるクラフトマンシップの結晶なのです。

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